UT Doujin Advent Calendar 2023」の記事として、拙著『KORAIL一般列車停車駅ほぼ全駅下車の旅』の制作過程を書くことにしました。同人誌が世に出るまでの過程の一例としてご覧いただければ幸いです。特に奇抜な作業をしたわけではありませんが、韓国語版を制作した話も書きましたので、外国語で同人誌を制作したい方(居なそう)の参考にもなるかと思います。

1. 旅に出るまで(~2019年6月)

元々鉄道業を本業としており、旅行記か何か書けと言われれば書くネタはあるわけですが、「同人誌として世に出すからには誰もやっていないことで書きたい、誰も作っていないものを作りたい」という思いがあり、本人としては鉄道メインのサークルのつもりが、界隈の人口が多い鉄道関係の同人誌は書けずに居ました。特に力を入れている全駅下車(駅巡り)に限っても、日本の全1万駅に降り立った先駆者は既に5人居るような世界です(参照)。だから鉄道メインの弊サークル初の同人誌が乗りつぶし本ならぬ食べつぶし本蓼科らん氏談)、『東京大学駒場キャンパス 一食全メニュー総覧』になったわけですね。

2019年、韓国に長期滞在する機会を得ました。当時中国鉄道時刻研究会が韓国鉄道時刻表を出版していたのですが、路線図や時刻表を見たところ、滞在中に全線完乗どころか全駅下車も可能ではないか、さすがに韓国で全駅下車をしたという話は日本の鉄道界隈でも聞いたこと無いし同人誌のネタになるのでは、と気付きました。

一方、ブログの方では訪問した駅の写真をひたすら上げ続けていて、それとの棲み分けをどうしようかと考えましたが、韓国で駅巡りをするオタクがそんなに居ないこともあってか、ネット上ですら駅の写真が少ないので、写真はいつも通りブログに載せ、旅行記のみ同人誌に載せるという方針にしました。同人誌だとカラーでの掲載は費用的に難しく、掲載枚数にも限りがあるという理由もあります。

2. 旅行というより修行中(2019年6~7月)

基本的に普段の駅巡りと同様ですが、同人誌を制作することを想定していたので、①高画質設定で写真を撮影すること、②変更後の旅程や特別な出来事等を記録しておくことの2点だけ留意しました。
①について、普段写真はブログに載せる以外に使い道が無いので画質を落として撮影していたのですが、同人誌として印刷するとなると高画質のデータが必要になるためです。②は、数ヶ月後には当然忘れているので。

旅行記は『KORAIL一般列車停車駅ほぼ全駅下車の旅』を読んでね!!!!!!!!!!

3. 制作(2019年7月~2021年末)

制作に2年半も掛かったことになっていますが、これは単に私が制作する宣言をしてから原稿が書き上がるまでに時間が掛かっただけです。
ほぼ全駅下車に成功して同人誌を制作することが確定したので、旅行後すぐに蓼科らんさんに編集の依頼をし、来年(2020年)の春休みには原稿渡すわ、と宣言しました。この時点では2月中に原稿送付、3月中に編集、そして2020年夏コミ(ゴールデンウィーク開催)での頒布を目指していたのだと思います。

当然何も起きないはずがなく、原稿が書き上がる気配も無いまま、2020年3月末にコロナウイルスの感染拡大により夏コミの中止が発表されたので、それを言い訳にして編集担当氏に予定より遅れる旨を伝えました。

「UT Doujin Advent Calendar 2023」の記事で色んな方が仰っていますが、人間は締切が無いと動かないもので、何度か編集担当氏に原稿遅れます宣言をした上で、2021年8月に冬コミ開催が発表されたのをきっかけにようやく本腰を入れて原稿を書き始め、10月に原稿送付、11月に編集・校正作業をし、12月上旬に入稿となりました。後書きにも書いたように、1年半もの間編集担当氏を振り回してしまいました。すみません。

予定より1年半遅れましたが、無事2021年の冬コミ(C99)で頒布することができました。

4. 韓国語版の制作(2022年1月~2023年10月)

韓国語版を制作することは、遅くとも旅行後に同人誌の制作が確定した時点で決めていました。前書きに

本書を切っ掛けとして韓国の鉄道に興味を持ってくださる方が、日本のみならず欲を言えば韓国でも、増えてくれれば嬉しい限りです。

と書いたように、韓国における鉄道界隈の層はそれほど厚いわけではありません。それこそ私のやったKORAIL一般列車停車駅約200駅(ほぼ)全駅下車などというのは、1ヶ月弱あれば出来るにもかかわらず、私の知る限り誰もやっていませんでした。そうした事情もあり、韓国語版の同人誌を制作し、韓国で鉄道趣味が活発化するのに多少なりとも寄与できればと考えていました。
ただ、さすがに韓国の同人誌即売会に赴いて頒布するのは大変ですし、そもそも鉄道界隈(というか同人界隈)の層が小さく、紙の書籍を制作しても費用が回収できるほど売れないと見ていたので、電子版で頒布することにしました。本当は紙の書籍でも作ってみたかったんですけどね。

原稿は出来ているんだからとっとと韓国語に翻訳しろという話なのですが、これまた締切が無いので作業が進まない。結局、日本に留学に来ていて鉄道にも詳しい銀空さんと知り合い、拙著や翻訳の話をしたのを切っ掛けに翻訳をし終えて銀空さんに送付し、9月に校正後の原稿を頂きました。
しかし、その頃には進学失敗・放校の危機に瀕していて同人誌どころではなく、校正後原稿の確認を終えて編集担当氏に送付したのが1年後の2023年8月、何度か校正を経てようやく10月29日に韓国語版完成となりました。

韓国語校正をお願いした銀空さんですが、もう一つ、それと同じくらい大活躍をしてくださりました。というのもこの方、1.5万人のフォロワーを擁する韓国語圏では著名なツイッタラーで、銀空さんにしていただいた告知ツイート約1,000ふぁぼ・約2,000リツイートに達し、お蔭様で韓国語圏で広く認知していただけたと思います。

編集担当の蓼科らんさんには韓国語の組版という無理難題を吹っ掛けた上に、日本語版に引き続き韓国語版でも制作宣言から原稿送付まで延期を繰り返してしまいました。すみません(2回目)

5. 今後

海外での全駅下車であれば、新規性がある上に語学趣味も活かせることに気付いたので、今後も別の地域での全駅下車旅行記を制作できればと考えています。中々すぐには出来そうにありませんが、無事完成した暁にはご愛顧宜しくお願いします。

 


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